私の所属大学では、8月末に科研費申請の学内締切がありました。
そのときにふと思い出したことがあるので、書き留めておきます。
「わかりやすく」には限度がある
よく、「科研費申請書作成のコツ」みたいなタイトルの本や記事を読むと、とにかくわかりやすく書くようにと述べられています。
確かにわかりやすい方がよいと思いますが、わかりやすさには限度があります。
初めて大学に就職し、初めて科研費に応募したときは、右も左もわからず「コツ」が書かれた本やウェブ記事を読みあさっていました。
そこには「中学生にもわかりやすいように」といったことが書かれていたように思います。
それを鵜呑みにした私は、本当に専門用語をほとんど使わずに、専門家でなくてもわかるように申請書を書いたのですが、その年は科研費を獲得できませんでした。
やはり、「わかりやすさ」には限度がありますし、中学生がわかる必要はありません。
その道の専門家がわかればよいのだと思います。
同じ専門分野の先生方の過去の申請書を見せてもらう
次の年に応募する際には、同じ専門分野の先生方の過去の申請書を見せてもらいました。
すると、誰も中学生がわかるようには書いていませんでした。
その年は、落とされた前の年と全く同じ内容で(中学生ではなく)専門家がわかるように申請書を書き直しましたが、見事に申請が通りました。
今思うと、中学生でもわかるように書くと「中学生がわかる程度の研究」だと思われてしまうのではないかと思います。
そもそも、専門用語なしでは踏み込んだ内容が書けないわけですし。
それに、「コツ」が書かれた本やウェブ上の記事をいくら読んだところで、それが自分の専門分野と違うものだと、ほとんど参考になりません。
参考になることと言ったら、レイアウトくらいではないでしょうか。
ここで言う「レイアウト」とは、「太字にする」とか「下線を引く」とか「表にまとめる」とかいったことです。
それよりも、やはり同じ専門分野の先生方にお願いして、過去の申請書を見せていただくのが一番よいと思います。
審査区分にも注意する
科研費は申請する際に審査区分を選べますが、この区分にも注意した方がよいです。
上述のように、「専門家にとってわかりやすく」書くのであれば、逆に言えば専門家でないとわからないからです。
英語学や言語学を研究している場合、当然応募する審査区分は「英語学関連」か「言語学関連」を選ぶことになりますが、それぞれの「内容」を見てみると、「英語学関連」の内容は「音声音韻、語彙と意味、文法、文体、語用論、社会言語学、英語の多様性、コーパス研究、英語史、英語学史、など」とあります。
一方「言語学関連」の内容は「音声音韻論、意味語用論、形態統語論、社会言語学、対照言語学、心理言語学、神経言語学、通時的研究、コーパス言語学、危機言語、など」と書かれています。
私のように統語論・形態論を研究内容としたい場合は、「言語学関連」を選ぶことになります。
「言語学関連」には「形態統語論」とハッキリ書かれているからです。
私は大学では英語関係の部署に所属していますし、大学院の出身研究室も英語学研究室で、世の中では英語学者として認識されているはずですが、科研費申請の際には言語学で申請した方がよいことになります。
WordでもLaTeXでも申請できる
ちなみに余談ですが、申請書の様式にはMicrosoft WordのものだけでなくLaTeXのものもあります。
昔は一太郎のものもあったようですが、今はこの2つのみです。
理系の研究者でコンピュータに詳しい人にはMicrosoftやWordが嫌いだという人が一定数いると思います。
また、LaTeXの方が数式を描きやすいからという理由でLaTeXを好む方もいると思います。
そういった人々のためにLaTeX用の様式も用意されたのだと思います。
言語学者でも、形式意味論を専門としている方であれば、LaTeXを積極的に使っていると思いますが、そうでなければWordが一番使い慣れていると思います。
そもそも、日本英語学会のEnglish Linguisticsをはじめ、国内のジャーナルの大半はWord形式での提出を求めてきますから。
私も普段、論文はWordで書くことにしているのですが、今年の科研費の申請書はLaTeXで書いてみました。
Wordの様式では項目間に大量の空行が入れられていて、そこを埋めていくことになりますが、そのときに注意書きまで動いてしまったりして気持ちが悪かったからです。
使い慣れたWordの方が速く書けたかもしれませんが、LaTeXにも多少はメリットがあるということです。
なお、ポンチ絵はAdobe Illustratorで作成しました。
さすがにLaTeXで図を作成するのは辛すぎます。
まとめ
ここまで書いてきたことは、実際に科研費を申請する段階にならないと考えもしないことです。
今後、この情報が誰かの役に立つとよいなと思いつつ、書き留めておきます。
今年の申請書、無事に通ってくれればよいのですが…

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