先日、恩師の先生の特別講演に行ってきました。
題目は「英語学の効用」で、生成文法の知識は英文解釈にいかに活かせるかというものでした。
ご講演の中で一番印象に残っているのが、
(1) I bought you up a passage to read to you.
という文の解釈についてです。
この文の不定詞節部分は「理由節」か「目的節」か「不定詞関係節」かで解釈を迷うところですが、toの後に空所があることから、理由節である可能性は排除されます。
次に、他動詞readの後の目的語の位置が空所であり、空所は主節の目的語のbookに対応することから、to不定詞節は目的節ではないかと思われるものの、そうすると(2)のようにto不定節のコントローラーはyouとなり、束縛原理に違反してしまいます。
(2) *PROyou to read to you
そのため、残された可能性は不定詞関係節のみとなり、解釈は「私は、あなたに、(私が)あなたに読んで聞かせるための(ある文書からの)一節を持ってきた」となるとのことです。
このように、厳密な解釈を行う際には、生成文法が役立つということです。
高校までに学ぶ英文法ではこういったことはわからないですし、普段英文を解釈する際にはなんとなく訳してしまいがちですが、このように生成文法に基づいた解釈を行わなければ、誤解を招く場面が出てくるかもしれません。
コミュニケーション重視で英文法が軽視される傾向にありますが、日本人が日本にいて英語を使う場面といえばメールや手紙、契約書のやり取りだと思いますので、スラング混じりの日常会話よりもむしろこうした厳密に精読できる力が必要なのではないでしょうか。
本来、研究とはその時点で何かの役に立つかどうかはわからないですし、そんなことを考えながら行うものではありませんが、これから生成文法が生き残っていくためには、世間に生成文法は役立つ学問であると認識してもらうことが必要なのかもしれません。
先生が示されたのは、そのための方略の一つとして、昔ながらの方法ではあるものの、訳読の役に立つことを訴えていくことも必要であるということでした。
例文を交えた説得力のあるお話で非常に感心させらたとともに、日本で生成文法を存続させていくためには(巷で言われている、学校現場と連携した「実践」も大事ですが)こうした「実践」的な話を私たち研究者も広めていかなければならないのかもしれないという危機感を抱きました。

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